人体のテンセグリティ構造。

昨日の「テンセグリティ構造」の続きです。


前回の記事では、建築のテンセグリティ構造には、ある美しさがあり、それと同様に人体もテンセグリティ構造を本来持っており、それをハイレベルで活用した動きにもそういった美しさが備わる、、、という趣旨のことを書きました。ちなみに、テンセグリティ構造をハイレベルで活用する、というのは、スポーツ・武道などで言われる「脱力」と大枠で一緒の話と思って頂いて構わないと思います。


この「ある美しさ」を得ようとする試み・メソッドは、スポーツ、武道、健康法、など、沢山の分野で見られますが、これらは、ラフに分けると、2つのカテゴリーに収まります。便宜上片方を「機能系」、もう一方を「筋膜系」と呼びましょう。

機能系: 人体の本来の構造に沿った動き方を開発するもの
例: アレクサンダーテクニーク、フェルデンクライスメソッド胴体力ゆる体操など

筋膜系:テンセグリティ構造の中で特に重要な、筋膜等の軟部組織を開放するもの
例: クラニオセイクラルセラピー、ロルフィング、筋膜リリース


これだけ様々なメソッドがあるのだから、テンセグリティ構造を活用することというのは、けっこうラクなんじゃないか?なんて思われることもあるのですが、実際のところ、それぞれ、顕著な効果が出なくて悩んでいる、、、ということが多いのも実情のようです。


機能系の場合は、効果が出ないこと、もしくは途中で進歩が止まってしまうこと、ということが良くあります。多くの場合は、テンセグリティ構造のベースとなる、筋膜など軟部組織の拘縮、癒着が取れないことがその停滞の原因になることが多いようです。拘縮・癒着とは、いわゆるコリ・ハリのこと。(シビアなレベルで言えば、大人でこの拘縮・癒着がゼロ、という人は皆無に近いと思って良いです)


筋膜系の場合は、確かに効果はあるのですが、腕前が確かな施術者によって施術が行われなる必要があり、コストがかかる、というのが一番の問題でしょう。また、筋膜などがほぐれても、その後の生活で従来同様の体の使い方やクセが続いてしまうと、元の状態に近いところまでコンディションが戻ってしまう、ということもあります。


こんな考え方から、私自身は、筋膜系のメソッドに優先順位を置き、テンセグリティ構造が成り立つ体のコンディションを作ってから機能系の取り組みをしていくのがベストなのかな、、、という考えに現在は立っています。


だからといって、専門の施術者に施術を続けてもらう、というのもコストパフォーマンス的に問題です。結局、このテンセグリティ構造あるいは「脱力」ということの実現は、現在の環境下では、筋膜をどうやってローコストでスムーズに開放していくか?という点が一番の難関となっているようです。

ローコストで筋膜系の取り組みを行うには?


実は、日本に古くから伝わる健康法で、「活元運動」というものがあります。野口晴哉さんという方が考案したものです。この活元運動の動き、というのが、筋膜をほぐす働きを持っている、という説が、最近聞かれるようになってきました。また、気功の「自発動」というのも同じではないか?と私は思っています。


活元運動
※画面真ん中の方は極端な例。多くの場合、特に初心者の場合は、背景で寝転がっている人々のように、おだやかな動きになることがほとんどです。


うわあ奇妙な動きですね(笑)。これが何で筋膜をほぐすと言われるのか?クラニオセイクラル・セラピーという、筋膜系の身体調整法で出てくるアンワインディングという動きに似ているんですね、この動きが。
Craniosacral Therapy Unwinding


この2つが同じものだとすると、筋膜系の取り組みも、一人でできるじゃん!ということになるわけです。

でも活元運動は一般には難しい。


でも、この活元運動、一点欠点があります。こうした動きができるようになるまで、けっこう時間がかかるようなんです。この活元運動関連のサイトでも、「活元運動が出るまで」なんていう手記があったりします。さほどにこの活元運動というフォーマットは、効果が出るまでに時間がかかる。要は、挫折の可能性が高い、というわけです。そこをスムーズに解消してこそ、エレガントな問題解決というものでしょう。

最初の取り組み方をちょっと工夫するだけで、自分で筋膜系の取り組みを可能にする方法。


ここの、最初のハードルを解決してくれるヒントは、逆に、クラニオセイクラル・セラピー側にあります。映像で、施術者が頭や手足を動かしているのですが、これ実は、クライアントの体が「収まりの良い」場所に体の各パーツを動かすのをガイドしてあげているんですね。クライアントが主役で、施術者はサポートなわけです。


これを自分でやる、というのは決して無理ではないです。初心者の練習としては、この映像でも序盤でやっているように、頭・手・足・胴体などを一箇所ずつ、収まりの良い場所に動かしていく、というのが良いでしょう。最初から映像に出ているような激しい動きを狙うのは効果が出ないか、かえって体を痛める原因になったりもするので、あくまでステップ・バイ・ステップで慎重に行きましょう、ということです。動きが小さかったり少なかったりしても効果は出ますので大丈夫です。


ちなみに、ここで出てくる映像では、動き続けている映像ばかりですが、時に、ピタリと体を動かしたくなくなるポイントに体が収まるときがあります。一瞬「あれ?」と焦るのですが、これは実は良い知らせ。この止まっている間に、筋膜などのガンコな凝りが解消することも多いです。私の経験では、映像のようにずっと動き続けているよりも、どこかで動きがピタリと止まる現象が起こったときのほうが顕著な効果が出ると思っています(なので、このピタリと止まるポイントを見つけるためにも、体の動きは最初はゆっくり、ステップ・バイ・ステップのほうが良い、と思っています)


上手くいっていると、体の中で何かがほぐれたり、はじけたりするような感じが出てきます。筋膜などがほぐれていっているわけです。(この筋膜がほぐれていく時に、抑圧された感情などが出てくることもありますが、これは時とともに開放されていき、次第に収まってきます。体性感情開放-Somato Emotional Release、と言われる現象です。これが出た後は、気分がぐんと爽快になります。憑き物が取れる、という感じです)


テンセグリティ構造から始まって、だいぶ話が飛びました(笑)こういう多分野を横断するような話が大好きです。


身体のホームポジション 藤本靖(著)
4862205364