アブダクション(演繹・帰納とは別の第三の推論形式)能力が問われる問題。

演繹・帰納とは別の、第三の推論形式とも言われる「アブダクション(リトロダクション)」について下の本を読んでいたら、ちょうどそのアブダクションが出来るか否かがカギとなる(と思われる)クイズに当たり、理解が急に進みました。


アブダクション―仮説と発見の論理 (米森裕二著)
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まずはクイズから。最近TwitterFacebookでしばしば拝見しますので、既にご存知な方も実際に正解が分かっている方もいらっしゃるかと思います。
初めての方は、記事中にネタバレがありますので注意。



?の中に入る数字は何か?という問題です。子供だとアッと言う間に解けるよ!という触れ込みになっています。


初めての方はまず考えてみましょう。
正解はこの下











ちなみに、この問題、正解は「2」。


なぜ「2」になるのか?実はその手前の式の全てで、右辺が「左辺にある閉じた丸(もしくは輪)の数」を表しているんですね。そして、最後の数字2581では8のみが丸2つを含んでいるため、正解は「2」となります。


実は、「アブダクション」の本を読む前にこの問題には触れていたのですが、本を読んでいる最中である今日になってこの問題をもう一度見る機会があり、


「この解に至るプロセスで用いられるのがアブダクションなのか〜」と腑に落ちました。


解に至る過程で必要になる「アブダクション


アブダクション―仮説と発見の論理 によれば、アブダクションとは、


「意外な事実や変則性の観察から出発して、その事実や変則性がなぜ起こったかについて説明を与える『説明仮説』を形成する思惟または推論」


と定義されています。また、パースによればこのアブダクションの推論形式は


□ 驚くべき事実Cが観察される。
□ しかしもしHが真であれば、Cは当然の事柄であろう。
□ よって、Hが真であると考えるべき理由がある


というものを取るとのことです。


そして、先の問題は、固定観念に縛られない力と同時に、この推論形式を(自覚があるにせよないにせよ)必要とする問題だ、、、ということが分かりました。


実際に、問題を説くプロセスをアブダクションの推論形式に当てはめてみると、


□ 8809=6, 7111=0, 2172=0, ... 5531=0 が成り立つという、驚くべき事実が観察される。
※これらの数式が成り立つとすれば、2581=???の右辺には何が入るか?というのがこの問題です。
□ しかしもしも右辺の数字が、左辺に並んだ文字が含む丸(もしくは輪)の数を表しているとすれば、それぞれの式が成り立つのは当然の事柄であろう。
□ よって、右辺の数字は、左辺に並んだ文字が含む丸(もしくは輪)の数を表すと考えるべき理由がある


となります。この問題では、このプロセスを通った上で「右辺の数字は、左辺に並んだ文字が含む丸の数を表す」という「どうやら正しい仮説」を、2581という文字列に当てはめて、答えを導き出すプロセスが必ず必要になる、、、ということです。


問題が以下のように変わっても、必要とされる推論プロセスは全く同じです。


五六=八
七九=四
一五=五
壱三=十
八ニ=???


答えはおのずとわかると思うので割愛。国ごとにいろいろなバリエーションが作れそうです(笑)


アブダクション=仮説・発見の論理と言われ、非常に魅力的なテーマながら、本を読んだところまででは今ひとつピンと来なかったところ、実例に触れて理解が急に深まった印象です。


さらに考えを進めていくと、アブダクション=具体から抽象を導き出すプロセス、と言い切れるのかもしれないなあ、、、ともなるのですが、ここはまたいずれ別の機会に。