企業のミッション・ステートメントについて考えてみた。

先日のエントリで、「やっぱりゴール設定は最重要だよね」という話を書きました。
http://d.hatena.ne.jp/Awayann/20091111/1257918466
今日はその続き。


ゴール設定が良く見える分野って何?といって真っ先に思い浮かんだのが、


企業のミッションステートメント


ビジョン・ステートメント、なんて言われたりもしますね。こうしたステートメントって「タテマエじゃない?」と思うこともあるのですが、実際は、企業のキャラクターをかなり強く反映するようです。様々な企業のステートメントを並べてみると、面白いことが見えてきました。

まず、いくつかの会社のステートメントを並べてみました。


まずはサンプルとして使う企業のミッションステートメントを各企業のWebページで調査。企業により、ステートメントとして表記されているもの、そうでないものと、表記がまちまちだったのですが、企業のミッションを一番大枠で示している箇所を拾ってきました。なお、「顧客満足」レベルの、抽象的過ぎる記述については、取り扱わないこととしました。


企業(個人)名ミッション
Microsoft (Bill Gates時代)A computer on every desktop.
すべての机にコンピューターを。
Google“Mission: to organize the world's information and make it universally accessible and useful.”
Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることです。
任天堂基本戦略は「ゲーム人口の拡大」です。その実現のために「世界中の一人でも多くの方々に、年齢・性別・言語・文化の違いやゲーム経験の有無を乗り越えて、ビデオゲーム・エンターテインメントを受け入れて楽しんでいただくこと」を目指し、チャレンジを続けています。
日本理化学工業障がい者の雇用を通じて社会とジョイントし、楽しく美しい生活具の創造と、地域社会の人々から愛される企業へ
ソフトバンクデジタル情報革命を通じ、人々が情報と知識を共有することを推進し、企業価値の最大化を実現するとともに人類と社会に貢献する
ファーストリテイリング
ユニクロ
ユニクロは、あらゆる人が良いカジュアルを着られるようにする
新しい日本の企業です。
楽天世界一のインターネット・サービス企業
サイバーエージェント21世紀を代表する会社を創る
キヤノン共生の理念のもと、永遠に技術で貢献しつづけ、
世界各地で親しまれ、尊敬される企業」をめざした中長期経営計画。
主要経営指標すべてが世界トップ100社に入ることをめざしています。
光通信日本最大のディストリビューター企業群を目指す

ステートメントを、公益−競争、定性的−定量的の二軸で並べてみました。


さてここから分類です。分類にあたっての軸の取り方に少し悩んだのですが、


公益 − 競争
定性的 − 定量



という2軸を縦・横に取り、おおざっぱに各企業のステートメントマッピングしてみました。例えば、「No1企業」などの、自社の順位を気にする表記が濃い場合には「競争」寄り、経営指標の数字をミッションとしている場合「定量的」、社会に生み出したいメリットが濃い場合には「公益」寄り、、、といった具合です。もちろん、言語解釈が入っている点で、バイアスがかかることは承知なのですが、そこは大目に見てもらえれば助かります。

なかなか興味深いマップが出来上がりました。


並べてみた結果がこれです。けっこう、企業のキャラクターをうまく色分けできるマップなのかな?と思うのですがいかがでしょうか。



さて、ここからかなり上から目線になり恐縮ですが、コメントをいくつか(笑)


ぱっと結果を見たときの第一印象は、「公益系」の企業強え〜ということ。MicrosoftGoogle日本理化学工業任天堂、この4社とも、ステートメントに、自社が競争の中でうんぬん、、、という話が全然出てこないのですが、やっぱりこのあたりの違いは大きな影響をもたらすのかなあ、と思わされます。また、これに加えて定性的なステートメントを持つ企業が、結果として世間に対するブランドイメージもより良い、という相関があるような印象も受けます。


この右サイドで特に面白いのはMicrosoft。全ての机にコンピューターを。というミッションは、「公益」系そのものなんですが、あくまでその目標は、定量的なものでしかない。Microsoftは、Windowsの普及を通じてこのミッションを猛烈なスピードで成し遂げた反面、ミッションがあくまで定量的な「コンピュータの普及」というところにとどまっていたことが、Windowsの「いまひとつユーザーに優しくないところ」や、ビルゲイツにまつわる悪評の発生、ということに結局繋がっているののかな?なんて邪推をしてしまいました。


ファーストリテイリングは、「新しい日本の企業」という、自社イメージの打ち出しがなければ、もっと右よりに置いても良かったのかもしれないなあ、と思っています。

ソフトバンクは、もう少し右に行くビジョンを心底抱けばより優れた企業になるかもしれない?


公益−競争のラインで真ん中に位置するのがソフトバンクソフトバンクは、IT系振興企業としては凄まじいスピードで成長を遂げた企業ですし、ユニクロも言わずもがなです。が、もっと右側のラインの企業と比べると、「企業価値の最大化」という目標がちょっと引っかかりますね。もっと「公益」寄りのミッションに孫氏が特化できれば、ひょっとすると良い変化のきっかけになったりするのかも?なんて思わされます。

日本の新興ネットベンチャーの限界は、「競争優位」のみを追っていることにある?


さて、こんどは図の左側に目を転じてみましょう。サイバーエージェント楽天。どちらの企業も、「自社のポジション」しかビジョンとして打ち出していない、というところが印象的です。GoogleMicrosoftなどが掲げた理想と比べると、、、、という印象が否めません。昔のライブドアも、「時価総額世界一」という目標を語るシーンが多かったですが、これも一緒かもしれません。世界に伍していくためには、競争優位以外の公益的なビジョン、というのはどうしても必要ではないでしょうか。日本のネットベンチャーでは大成功といえる2社だけに、国内だけで収まらないようにもうひと頑張りして欲しいなあ、というのが本音です。


キヤノン光通信については、この話の流れだと、どうしてもあまりいいことを書ける流れでもないだけに、評価がはばかられますねえ。光通信については、ネット上ではブラック企業といわれていますが、実際のところどうなんでしょうか。

ミッションが大事、というのはどうやらそうらしい


こうやって自分でマッピングをしてみると、それぞれの企業に感じる雰囲気や、企業の評判といったもの、また、企業活動が社会に与える影響までもが、ミッション・ステートメントと整合しているなあ、ということを強く感じてます。


また、企業間の競争でも、圧倒的な強さを持っている企業というのは、自社の評価や、競争というのをまったく、あるいはほとんどミッションに含まず、社会に与える価値だけが記述されている傾向が強い、とも感じました。競争で勝つためには、競争を意識してはならない、というパラドックスを感じるのは私だけでしょうか。


そして、このビジョンの違いは、企業に限らず、個人でも同じように働くのではないか、とも思うわけです。Microsoftにせよ、Googleにせよ、ソフトバンクにせよ、最初はビジョンを共有した数人がはじめたことなわけですから。