東京電力の供給能力や現在の需給状況について数字をいろいろ拾ってみた。
3月11日に発生いたしました震災により多くの方々の命が失われことに対し、深くお悔やみを申しあげます。また一人でも多くの方の命が救われるよう、そして被災に遭われた方々が一刻も早くもとの生活を取り戻せるよう、心よりお祈りいたします。
さて、この度の震災で、東京電力が創業以来初めての輪番停電を3月14日に実施。当たり前にある電気が止まり、電車などの社会インフラの運用も滞り、被災地から離れた神奈川県在住の私にとっても、震災の大きさを強く意識する日となりました。
他の皆様と同様我が家でも、できる限りの節電を行っていますが、明かりが暗め、暖房無しの部屋でふと思ったのが、「実際のところ、数字で表すとどのくらいなんだろう?」ということでした。
東京電力のホームページやWikipediaでいろいろと数字を拾ってみたら、以下のようなことが分かりました。単なる情報の羅列を抜けていない部分もありますが、これまでに知ったこと・感じたことをまとめておこうと思いました。
東京電力の発電能力ってどのくらい?
ソース: 東京電力 - Wikipedia
東京電力の発電能力(出力)は以下の通り。
種類 | 数 | 最大出力 |
水力発電所 | 160箇所 | 852.0万kw |
火力発電所 | 26箇所 | 3,683.1万kW |
原子力発電所 | 3箇所 (福島×2、柏崎) | 1,730.8万kW |
風力・地熱発電所 | 2箇所 | 0.4万kW |
合計出力 | 6,266.3万kw |
原子力発電所3箇所で全体の28%に当たる数字をカバーしており、(賛否はさておき)原子力発電所の能力の高さが伺われます。
ちなみに、合計6,266.3万kwというのは、全部の発電所をフルパワーでぶん回したときの能力ですから、この出力がそのまま出るわけではありません。現在の需要と実際の供給量については後述します。
今回の地震で、どれだけの出力が損なわれているのか?
ソース: 東北地方太平洋沖地震における当社設備への影響について【午後3時現在】(東京電力 3月13日プレスリリース)
東京電力が、「地震により停止中」としている発電機は全て原子力および火力。水力発電所は既に復旧済。
東京電力の合計出力6266.3万kwのうち、21.6%に当たる1357.8万kw分もの発電機が今回の地震の影響により停止。他の発電所を仮にフル稼働させても最大出力は4,908.5kwに限られることとなります(実際は、福島第一の4〜6号機も少なくともかなりの間は使えないだろうことから、実際はもっと数字が落ちると推定されます)。もちろん、定期点検なども必要なことを考えれば、この出力を継続することとて現実味がなさそうなことは言うまでもありません。
詳細な内訳は以下の通りとなります。
1.原子力発電所
発電所 | 号機 | 最大出力 |
福島第一 | 1号機 | 46万kw |
福島第一 | 2号機 | 78.4万kw |
福島第一 | 3号機 | 78.4万kw |
福島第ニ | 1号機 | 110万kw |
福島第ニ | 2号機 | 110万kw |
福島第ニ | 3号機 | 110万kw |
福島第ニ | 4号機 | 110万kw |
原子力発電所計 | 642.8万kw |
2.火力発電所
発電所 | 号機 | 最大出力 |
広野 | 2号機 | 60万kw |
広野 | 4号機 | 100万kw |
常陸那珂 | 1号機 | 100万kw |
鹿島 | 2号機 | 60万kw |
鹿島 | 3号機 | 60万kw |
鹿島 | 5号機 | 100万kw |
鹿島 | 6号機 | 100万kw |
大井 | 1号機 | 35万kw |
東扇島 | 2号機 | 100万kw |
火力発電所計 | 715万kw |
現在、福島第一・第二原発で停止している計7台の発電機が復旧することは素人目にもあり得ないシナリオに見えます(廃炉覚悟で冷却措置を頑張っている状況では?)。ですので、福島第一・第二の停止した642.8万kwについては「失われたもの」であり、地震ににより停止した発電機を復活させられるのは火力発電所の715万kw相当のみと見るのが妥当でしょう。
現在の需給状況は?
東京電力は、3月15日の需給予測として、
需要量(18時〜19時): 3,700万kw
供給量: 3,300万kw (他電力会社の支援分を含む)
と発表しています。
東京電力の発電所をフルに回せば4908.5万kwがあるところ、供給可能なのが3,300万kwと開きがありますが、これは定期点検中の発電機があることや、変電所など流通設備の損害なども影響しているものでしょう。発電所なんて、スイッチをポンと押せば動くようなモノではないはずなので、精一杯やってもこれまで、という正直なところなのだろうと思います。
また、ここでの需要量は、地震を前提とした需要低下を織り込んでいる数字の模様。地震を前提としない場合は(世間が普通に回っている場合、程度に理解すれば良いのでしょうか。。。)これよりも需要は増えるようです。
※「3月14日の需要状況」という東京電力参考資料に、「地震を前提としない場合の想定需要」という項目がありました。
ちなみに、14日の実績需要は、2,800万kw。かなり少なめに抑えられましたが、これは、企業の操業停止や社会インフラ(電車など)の運用停止、そして一般家庭などでの節電、気温の高さなどが効を奏した上での最低需要値と見るべきでしょう。逆に言えば、これ以下に需要が落ちることはまずない、と考えるのが妥当かと思います。
数字を見ての感想。
Wikipediaや東京電力のホームページなどの情報のみですが、全体像がおぼろげながら見えてきた感じです。
電力供給の増加に寄与しそうな要素は2つ。停止している火力発電機715万kw分の再稼働と、現在休んでいる発電機が稼働を始めること。ここが進むごとに需給逆転は見えてくるのでしょう。
どのくらい時間がかかるか?どれだけ供給が最終的に増やせるのか?は素人の私にはちょっと推測が付きかねますが、1台1台、少しずつ供給が増えていくのを待つほかないだろうとは思います。
また、東京電力の参考資料では、地震を前提としない場合の電力需要はピーク時4,700万kwだったそうですが、短期間で供給がここまで増えることは考えにくいシナリオだとも思います。
※4/15追記: 東京電力の記者会見(22:00前後)にて、「4月末までに400万kw程度の上積みをしたい」との発言がありました。Ustreamにて確認。
従い、やっぱり節電は引き続き大事!ということになるんでしょう。とはいえ、本日のように経済活動や社会インフラを半分麻痺させた状態で日々を過ごすわけにもいかないですから、できる節電をやりながら、東京電力の供給が増えることを期待する、ということになるのだと思います。
節電、頑張りましょう。また、東京電力で復旧活動に当たられる方々は、どうか事故・怪我などなさいませんように。